2011年に公開され、国内外で一大旋風を巻き起こした富田克也監督『サウダーヂ』に続く空族、待望の最新作『バンコクナイツ』がテアトル新宿ほかにて2月25日(土)よりいよいよ公開スタート。それに合わせて、当劇場では空族がこれまでに作りあげてきた全作品を上映。
空族は如何に『バンコクナイツ』へと辿り着いたのか?!20年の歳月をかけ重なり絡み合う、壮大なる伏線とでもいうべき作品群を、まとめてご覧いただける稀少な機会です。
空族の原点。中上健次、柳町光男に多大な影響を受け制作に4年を費やした富田克也監督処女作
刑務所から出所したチケンが久しぶりに故郷に帰ってきた。自分のいないうちに、少しずつ何か変わり始めている気配をチケンは感じ取る。老婆たちのうわさ話や、団地、仲間たち……。「紅雲院」は屋根の改修工事をしている。「紅雲院」には蛇たちが滝壺に集まって天に向かって遡り、屋根で体を赤く染めて龍になるという言い伝えがあった。その赤かった屋根の色が変わっていたのだった。チケンは「紅雲院」という寺の跡取り息子だ。刑務所に入ってからチケンは、以前は嫌っていた坊主になるために修行に出ようと決意していた。一方、幼馴染みのシラスはやくざになったと仲間から知らされる。シラスはやくざになってもなりきれず、足をあらいたいとチケンに言う。チケンは幼い頃に果たせなかった約束を果たそうと、シラスを助けようとして巻き込まれて行く。
監督 | 富田克也 |
出演 | 西村正秀/鷹野毅/荒木海香/古屋暁美/伊藤仁/相澤虎之助 |
作品データ | 2003年/デジタル/140分 |
チンピラの祭りのあと労働が待っていた。
『国道20号線』に繋がる、出口の無い街を彷徨う元走り屋たちに捧ぐ労働歌
かつて暴走族であった4人の仲間は、現在それぞれの生活を送っている。元特攻隊長であったヤスダとその後輩たちは、かつての友、新宿のイカワ、トミタ達とどうやら小競り合いが続いているらしい。そして一人、岡山へ単身赴任しているイチムラ。彼だけは会社にサラリーマンとして就職することができた。「俺は飯を食う為にまともになって働く」とイチムラ。長引く不況や、失業の不安、繰り返しの日々。チンピラの祭りの後、労働が待っていた。そして誰もそれを避けられなかった。
監督 | 相澤虎之助 |
出演 | 安田豊久/井川拓/二通じゅん/富田克也/鳥肌実 |
作品データ | 2003年/デジタル/50分 |
アジア裏経済3部作の第一作目。テーマは“麻薬”。空族のアジアへのまなざしはここから始まった。『バンコクナイツ』への道の起源
90年代セカンドサマーオブラブのうねりの中で、日本中からバックパッカーが世界に向けて旅立った。あるものはインドへ、あるものはチベットへ、若手お笑い芸人が世界を旅するテレビ番組が好評を博していた。その中で1人の若者がタイ北部チェンマイへと旅立っていった。この時期旅立った多くの若者たちは「自分探し」と称した自分たちの旅行が、いったい何の上に成り立っているのかを考えはしなかった。しかし、歴史はそれを許さない。1人の若者は、バンコクの安宿である夢を見る。一面のケシの花畑の中で声が聞こえてくる。「わたしたちを救ってください」その声にひかれ、若者は20世紀の歴史の闇に葬り去られようとしている東南アジアの少数民族、モン族の村へと向かうのであった。
監督 | 相澤虎之助 |
出演 | 柳田裕記/安田豊久/行友太郎 |
作品データ | 1997年/デジタル/45分 |
アジア裏経済3部作の第二作目。テーマは“戦争”。キャラクターでは元自衛隊員オザワの登場、音楽ではバビロンバンドの誕生。『バンコクナイツ』への布石はこの作品で揃った
新宿でキャッチをしていたオザワは風営法や都の規制、はたまた自分の不手際で海外へ身をかわすハメになってしまった。先輩の小澤さんに厄介ばらいのついでにベトナム、カンボジアの女の子でも新規開拓してこいと言われたのだ。単身乗り込んだベトナムで、オザワはひとりの日本人に出会う。革命家だと名乗る謎の男、小神に誘われオザワはインドシナをさまようことになる。ほとぼりが冷めるまでテキトーにネタでも吸って女の子と遊んでいようと考えていたオザワであったが、やはり歴史はそれを許さなかった。硝煙の彼方から声が聴こえる。「食う米がある限り、わたしたちは戦う」いつしか、ベトナムの戦場にまよいこんだオザワは、バビロンの銃を手にすることとなる。
監督 | 相澤虎之助 |
出演 | 富田克也/伊藤仁/鷹野毅/與板由希子/高野貴子/荒木海香/尾﨑愛(ナレーション) |
作品データ | 2012年/デジタル/46分 |
©「同じ星の下、それぞれの夜」製作委員会 |
俳優、川瀬陽太が中年のダメ男を好演。楽園はどこにある?『バンコクナイツ』前夜とも言うべき作品
日本でも食いあぐねている売れない中年俳優の男「金城」が知人に勧められるがままにバンコクに降り立ち、今度はそこで出会った行きずりの二人のタイの女とともに北部の町チェンライへと旅立つ姿を追ったロードムービー。『バビロン』シリーズと『バンコクナイツ』の間にリンクする中編。空族が信頼する俳優、川瀬陽太を主人公にむかえたタイ北部の自然の風景や少数民族の村をロケした大人のおとぎ話。製作:吉本興業株式会社
監督 | 富田克也 |
出演 | 川瀬陽太/Ai/レイザーラモンRG |
作品データ | 2012年/デジタル/45分 |
パチンコ、ドンキ、消費者金融。『サウダーヂ』へと繋がる地方都市ロードサイドのリアル。タイに想いを馳せるキャラクター“オザワ”の初登場
かつて暴走族だった主人公ヒサシは、同棲するジュンコとパチンコ通いの毎日。シンナーもやめられないていたらくで借金だけが嵩んでゆく。そんなヒサシに族時代からの友人で闇金屋の小澤が話を持ちかける。「なぁヒサシ、シンナーなんかやめて俺と一緒に飛ばねえか?」地方都市を走る国道。両脇を埋めるカラオケBOX、パチンコ店、消費者金融のATM、ドンキ・・・。現代の日本、とりわけ地方のありきたりの風景。ヒサシは夜の国道の灯が届かないその先に闇を見つけてしまった。宇宙のようにからっぽで、涯てのない闇のなかで繰り返されるありふれた事件、そしてかつて見たシンナーの幻覚の残像がヒサシを手招きする。「ほんで俺も行ってもいいの?ホント?ホントに?」
監督 | 富田克也 |
出演 | 伊藤仁/鷹野毅/りみ/村田進二/西村正秀/Shalini Tewari |
作品データ | 2006年/デジタル/77分 |
“移民•土方•ヒップホップ”をテーマに地方都市の現状を描いた空族の代表作。
『バンコクナイツ』では謎の遊牧民ビンちゃんが再び登場する!?ラッパーの田我流が映画初主演を飾りstillichimiyaと空族が初タッグを組んだ
山梨県甲府市。何の変哲もなく、人通りもまばらな中心街はシャッター通り。不況の土木建築業には、日系ブラジル人を始めとする様々な外国人労働者たちがいた。HIPHOPグループ“アーミービレッジ”の猛は派遣の土方として働き始める。自己破産した両親はパチンコに逃避、家庭は崩壊。猛の働く建設現場にも、多くの移民たちがいた。そこで、土方一筋に生きて来た精司や、タイ帰りのビンと出会う。彼らと共に仕事帰りにタイパブに繰り出す猛。ホステスのミャオに会って楽しそうな精司や、盛り上がるビンに違和感を覚え、外国人を敵視する猛。精司は、妻の恵子が怪しげな商売に手を出し始めたことで、ますますミャオにのめりこみ、全てを捨てて彼女とタイで暮らす事を夢想しはじめる。しかしミャオはタイの家族を支えるために日本で働き続けなければならない。やがて、追い詰められて廃業する下請け。ビンはこの街に見切りをつけようとする。“saudade”。ポルトガル語で“郷愁、情景、憧れ”。そして、追い求めても叶わぬもの。移民たちの輪の中に、かつての恋人まひるの姿を見つけた猛は日系ブラジル人デニス率いるHIPHOPグループ“スモールパーク”と出会う。彼らとの共生を信じるまひると、否定することで自分を支えようとする猛。そして日本人と日系ブラジル人二つのHIPHOPグループが競い合うパーティーの夜が始まる…
監督 | 富田克也 |
出演 | 田我流/鷹野毅/伊藤仁/ディーチャイ•パウイーナ/デニス•ハマツ/尾﨑愛/川瀬陽太 |
作品データ | 2011年/35mm/167分 |
『サウダーヂ』と共に生まれた双生児。移民たちが織りなすミュージカル映画と呼ばれたドキュメンタリー。現地の人々に寄り添う空族の独特なリサーチへのアプローチは『バンコクナイツ』へと受け継がれる。
新作『サウダーヂ』のリサーチとして、一年間にわたって撮りためられた映像を空族の高野貴子が編集し、新たな息吹を与えるドキュメンタリー作品。『サウダーヂ』出演者たちの実生活を観る事ができる。地方都市の農業、土木業、工業、商業はこれからどうなっていくのかという経済的な問題群の渦中で、ブラジルからの移民労働者や若いHIP-HOP グループといった集団が結びついていく。環境音、出演者の歩くリズム、ショベルカーの金属音、そしてブラジルのサンバ。ミュージカル映画のようだ(boid 樋口泰人)と評されたこの作品は『サウダーヂ』と共に観る事でより重層的に共鳴しあうはずである。※ドキュメンタリー作品
企画 | 富田克也 |
作品データ | 2009年/デジタル/50分 |
stillichimiyaのおみゆきチャンネルと共にフィリピンの東南アジア最大のスラムに潜入!アジアのヒップホップとの出会いは、フィリピンのTondo Tribeの『バンコクナイツ』出演へと繋がってゆく
フィリピンのトンド地区に招かれた、HIPHOPグループstillichimiyaのトラックメイカー、Big BenとYoung-G(Omiyuki Channel)のふたりと、地元のHIPHOPコミュニティとの交流を描いたドキュメンタリー。 ギャング社会と密接に結びついたフィリピンのHIPHOPシーン、低所得者層の住む地域で治安の悪さの中ラップやダンスを学ぶ少年少女たち。危険と隣合わせの日常を生きる彼らの顔は、それでも屈託のない笑顔に覆われている。音楽を通じた文化交流の単なる記録だけではなく、まさにこの映画の存在こそが国境を越えた人間関係をつくり出していく軌跡となる。フィリピン最大のギャングTBS13のメンバーにより結成されたHIPHOPグループ、TondoTribeが出演、全面協力している。※ドキュメンタリー作品
企画 | 富田克也 |
作品データ | 2011年/デジタル/60分 |
上映期間 | 3/4(土)~3/17(金) |
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上映時間 | 20:10 |
当日料金 | 一般・大・高:1,500円/シニア:1,000円 |
備考 | ★『バンコクナイツ』割り(『バンコクナイツ』チケット提示):1,200円 |